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白國
白國

2015年12月04日

妖々稲荷と迷いの子4

 四本の足を再確認しても足の裏からは湿り気を含む木床の感触がある。昨日は快晴とまでは言わないがそれなりに晴れていた。いや、そもそも雨が降ったとしても床が湿ることは普通はない。大明は困惑する思考を抑え足を運ぶ。幾分床が脆くギシギシと軋む音が発生するが気にならない。
 「汝。」
 大明が少女に寄り添い声をかける。少女は声に応える様に沈めていた顔を上げる。歳が10にも満たない様な小さな体で
 「汝、名は何と言う?」
 言葉を発しない少女に大明は畳み掛けるように言葉を紡ぐ。少女は声が発している正体が視界にいる狐からだと理解する。少女は目の前に居座る狐に向かって言った。
 「ナキサ……」
 少女が言った三文字、それが少女を表す言葉。大明は名を聞いて何かを思ったのか、クスリと微笑する。ナキサは体を強ばらし、体を社の隅へ隅へと後ずさる。人語を話す狐に対して何か気に触れたのかと思ってしまったからだ。
 「儂は大名と呼ばれる稲荷の神。そう怯えるな、とって食おうなど考えておらぬ。」
 大明は怯えるナキサを宥め、どうしてこの山に近づいたのかと疑問を投げた。話によると桜まつりに来ていた両親とはぐれてしまい、迷っていたらこの社を見つけて休んでいたとのこと。そこに獅子ヶ鼻に住む狐に侵入者だと勘違いして、捕らえられてしまったとのこと。
 「ナキサ、其方の両親は今おるのか?」
 大明の問いにナキサは首を横に振るう。
 「ならしばらくここにとどまるが良い。食はちょっと困るかもしれないができる限り不自由のない事を約則しよう。他の狐たちには儂から話して―」
 「どうして、私に優しくしてくれるの……?」
 事を進めていく大明の話を折るようにナキサは言った。どこの馬の骨かわからない、ましては同族でも何でもない厄介者をなぜ率先して引き受けいてくれるのだろうか。
 頭の中が混乱する少女は大明に問う。大明一瞬の間を置いて微笑んだ。まるで母親が可愛い娘を見るかのように。
 「その問いの答えは、汝の体が知っておる。」


タグ :小説

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