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白國
白國

2015年12月26日

妖々稲荷と迷いの子6

社の中へ風が入り込み、寒気を覚える。春風が吹けば昼夜関係なく人の心に安らぎを与える。だが、今流れた風は安らかという言葉を嘲笑うような不快感を与えるものだった。
 「きたか、呪われし愚者どもが……」
 大明が社の戸を睨み、素早くナキサに振り替える。ナキサは慣れない環境でのn疲れからか小さな寝息を立てている。
 それを見た大明は心から安堵すると、戸から外へ移動し、天に向かって一吠えあげる。間もなくして大明の周囲に大明を慕う狐たちが集まった。
 「同士よ、これは聖戦である。我らの安息を奪う者たちを払う闘いである。」
 大明が紡ぐ一言一言が今ある立場を正当化させるような、危険であり酔いしれる言葉に狐たちの内側から力が溢れる。
 「きっと、いや今いる仲間たちの幾つかは失うだろう。今隣にいる友がこの後立っているか分からない。だが恐れるな、人ならぬ者には安息を与えるため……行くのだ。」
 大明が演説を終えると、狐達は個々に散らばり、姿を消す。再び静けさを取り戻した獅子ヶ鼻に一人残された大明は天を仰ぐ。
 「合縁奇縁……人と神、そして人ならざるもの。彼女はきっと……目覚めるだろう。」
 刹那、空が弾け、爆音が鳴り響く。始まったのだ。死してなお神を恨む人と神そのものの大戦が。


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